その症状やけど虫の仕業かもしれません
夜、網戸の近くで本を読んでいたり、部屋の明かりに誘われて飛んできた小さな虫を、何気なく手で払ったりしたことはありませんか。もし、その数時間後から翌日にかけて、腕や首筋に線状の火傷のような跡と、猛烈なかゆみが出現したとしたら、それは「やけど虫」の仕業である可能性が極めて高いです。やけど虫の正式名称は「アオバアリガタハネカクシ」。体長は七ミリ程度と非常に小さく、頭部は黒、胸部はオレンジ、腹部は黒とオレンジの縞模様という、アリに似た派手な見た目をしています。この虫は、水田や畑、湿った草地などに生息し、特に夏場の夜間、光に集まる習性があります。問題となるのは、彼らの体液に含まれる「ペデリン」という強力な毒素です。この毒の強さは、コブラの毒の数倍とも言われ、皮膚に付着すると、まるで化学薬品による火傷(化学熱傷)のような激しい炎症を引き起こします。これが、火傷のような見た目になる理由です。症状は、毒液が付着してからすぐに出るわけではなく、数時間から半日ほどのタイムラグを経て現れるのが特徴です。最初は少し赤くなる程度ですが、次第に線状のミミズ腫れや、小さな水ぶくれが多発し、それらが融合して大きな水疱を形成することもあります。そして、火傷のような見た目とは裏腹に、ヒリヒリとした痛み(灼熱感)と同時に、耐え難いほどの強いかゆみを伴います。この症状が「線状皮膚炎」と呼ばれるのは、虫を払いのけた際の動きに沿って、毒液が線状に塗りつけられるために起こる典型的な症状だからです。もし、あなたの皮膚に現れた火傷のような跡が、一本の線や、引っ掻いたような筋状になっているのであれば、それは夜の間にあなたの肌を訪れた、小さな毒虫からの不吉な置き土産なのかもしれません。