市販の殺虫剤をいくら撒いても、チャバネゴキブリが根絶できない。その最大の理由は、薬剤が効きにくい強固な卵鞘と、その卵鞘から次々と孵化してくる新たな世代の存在です。この終わりのない繁殖サイクルを断ち切るために、プロの害虫駆除業者は、一般家庭では行えない、専門的な知識と戦略に基づいたアプローチを取ります。プロがまず行うのは、徹底した「生息調査」です。彼らは、チャバネゴキブリが卵鞘を産み付けやすい場所、つまり冷蔵庫の裏やシンクの下、電子レンジの内部、壁の隙間といった場所を熟知しています。特殊な機材や長年の経験を元に、隠された卵鞘や巣を正確に特定し、問題の核心を突き止めます。そして、駆除の主役となるのが、市販品とは成分や効果が全く異なる、プロ専用の薬剤です。その中でも特に重要な役割を果たすのが、「ベイト剤(毒餌)」と「IGR剤(昆虫成長制御剤)」です。ベイト剤は、ゴキブリが好む成分に、即効性ではなく、遅効性の毒を混ぜたものです。これを食べたゴキブリは、すぐに死ぬのではなく、巣に帰ってから死にます。そして、ゴキブリには仲間やそのフン、死骸を食べるという習性(共食い)があるため、巣に持ち帰られた毒が、巣全体の仲間、さらには卵鞘から孵ったばかりの幼虫にまで連鎖的に広がり、コロニーを内部から崩壊させるのです。一方のIGR剤は、ゴキブリを直接殺すのではなく、幼虫が成虫になるための脱皮を阻害したり、成虫の生殖機能を破壊したりする薬剤です。これにより、たとえ卵鞘から幼虫が孵っても、彼らが次世代の卵を産むことはできなくなり、繁殖サイクルそのものを根本から断ち切ることができます。プロの駆除とは、単に目の前のゴキブリを殺すことではありません。彼らの生態と習性を逆手に取り、ベイト剤で巣を根絶し、IGR剤で未来の世代を生まれないようにするという、時間差をつけた二段構えの戦略で、難攻不落のチャバネゴキブリとその卵を、確実に叩き潰すのです。
プロはチャバネゴキブリの卵をこう叩く