ある朝目覚めると、腕や足、首筋などに原因不明の赤い発疹ができており、耐え難いほどの猛烈な痒みに襲われる。そんな経験はありませんか。それは、単なるダニや蚊による虫刺されではなく、夜間に活動する吸血害虫、トコジラミの仕業かもしれません。トコジラミによる被害を早期に特定するためには、その刺し跡の特徴を正しく知ることが非常に重要です。トコジラミの刺し跡が他の虫刺されと異なる最大の特徴は、一箇所だけでなく、複数の箇所が集中して、あるいは列をなすように刺される傾向がある点です。これは、トコジラミが吸血する際、一度で満足な量の血を吸えなかったり、血管を探して移動しながら何度か刺したりするためだと考えられています。被害に遭う場所は、就寝中に衣服から露出している部分、例えば腕や手、足、首、顔などが中心です。パジャマなどを着ていても、布地の隙間から侵入して刺されることもあります。刺された直後は症状が出ないことも多く、数時間後から翌日以降に、強い痒みを伴う赤い発疹として現れます。この痒みは非常に執拗で、個人差はありますが、一週間から二週間以上続くことも珍しくありません。人によっては、痒みのあまり掻き壊してしまい、そこから細菌が感染して皮膚炎(とびひ)に発展するケースもあります。また、トコジラミ被害を特定する上で、刺し跡と合わせて確認すべき重要なサインが「血糞(けっぷん)」の存在です。これは、トコジラミが吸った血を糞として排泄したもので、シーツやマットレス、ベッドフレーム、壁などに、黒いインクのシミのような、小さな点々として現れます。もし、体に謎の虫刺されがあり、かつベッド周りでこの黒い点々を発見したならば、それはトコジラミが潜んでいる可能性が極めて高いことを示す動かぬ証拠です。蚊やダニとは比較にならないほどの痒みと、その執拗な被害から一刻も早く解放されるためにも、これらのサインを見逃さず、迅速な対応を取ることが求められます。