腕や背中、胸などに、火傷のような水ぶくれや赤い発疹が帯状に現れ、かゆみや痛みを伴う場合、それは「帯状疱疹」という病気のサインかもしれません。やけど虫による皮膚炎と見た目が似ていることもありますが、その原因と対処法は全く異なるため、正しい知識を持つことが重要です。帯状疱疹は、多くの人が子供の頃にかかる「水ぼうそう」のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が原因で起こります。水ぼうそうが治った後も、このウイルスは体内の神経節に静かに潜伏し続けます。そして、加齢やストレス、過労などによって体の免疫力が低下した時に、潜んでいたウイルスが再び目を覚まし、神経を伝って皮膚へと移動し、炎症を引き起こすのです。帯状疱疹の最も特徴的な症状は、体の左右どちらか一方の神経に沿って、帯状に発疹や水ぶくれが現れることです。体の中心線を越えて、左右両側に症状が出ることはほとんどありません。胸から背中、腹部、顔、腕、足など、体のどこにでも発症する可能性があります。皮膚の症状が現れる数日前から、その場所にピリピリ、チクチクとした神経痛のような痛みや、かゆみ、違和感を感じるのが一般的です。その後、赤い発疹が現れ、次第に小さな水ぶくれに変化し、一週間から十日ほどでかさぶたになって治癒していきます。痛みやかゆみの程度には個人差があり、皮膚症状が治まった後も、数ヶ月から数年にわたって頑固な神経痛が残ってしまう「帯状疱疹後神経痛」という後遺症に悩まされることも少なくありません。帯状疱疹の治療は、時間との勝負です。発症から七十二時間以内に、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」の服用を開始することが、症状の悪化や後遺症のリスクを軽減するために極めて重要です。もし、体の片側にピリピリとした痛みを伴う火傷のような発疹が出た場合は、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、一刻も早く皮膚科や内科を受診してください。早期発見・早期治療が、つらい痛みからあなたを救う鍵となります。