ある日突然、腕や首に火傷をしたような水ぶくれや赤い筋状の跡ができ、しかもそれが火傷特有の痛みではなく、耐え難いほどの「かゆみ」を伴う。そんな奇妙な皮膚症状に、多くの人が「一体これは何だろう?」と強い不安を覚えます。火傷をした覚えは全くないのに、見た目は明らかに火傷のよう。この不可解な症状の正体として、まず疑われるべき原因がいくつか存在します。最も可能性が高いのが、「やけど虫」という通称で知られる昆虫による皮膚炎です。正式名称を「アオバアリガタハネカクシ」というこの小さな虫は、体液に「ペデリン」という強力な毒素を含んでいます。この虫が皮膚にとまった際に、無意識に手で叩き潰したり、払いのけたりすると、毒の体液が皮膚に付着し、数時間から数日後に、まるで火傷のような線状の赤みや水ぶくれを引き起こすのです。痛みと同時に、強いかゆみや灼熱感を伴うのが特徴です。また、虫以外が原因である可能性も考えられます。その一つが「帯状疱疹」です。これは、過去に感染した水ぼうそうのウイルスが、体の免疫力が低下した時に再活性化して起こる病気で、体の片側の神経に沿って、帯状にピリピリとした痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれが現れます。初期段階では、かゆみを強く感じることもあります。さらに、植物や化学物質による「接触皮膚炎(かぶれ)」も原因の一つです。ウルシなどの植物や、特定の化粧品、薬品などに触れることで、アレルギー反応として火傷のような水ぶくれやかゆみが生じることがあります。このように、火傷みたいな跡とかゆみの背後には、様々な原因が隠されています。自己判断で誤った対処をすると症状を悪化させる可能性もあるため、まずは原因を正しく知ることが、適切な治療への第一歩となるのです。