長い冬が終わり、柔らかな日差しと共に、草木が芽吹き始める春。この穏やかな季節は、蜂たちにとっても、新たな王国の建設が始まる、最も重要な時期です。冬の間、朽ち木の中や土の中で、たった一匹で越冬していた女王蜂が、長い眠りから覚め、活動を開始します。春の蜂対策は、この「女王蜂」の動向を理解することから始まります。冬を生き延びた女王蜂の最初の仕事は、体力を回復させることです。花の蜜や樹液を舐め、飛び回るためのエネルギーを蓄えます。そして、次に行うのが、新しい巣を作るための「場所探し」です。カラスや人間といった外敵から身を守れ、雨風をしのげる安全な場所を求めて、女王蜂は単独で、家々の軒下や、庭木の枝、ベランダの室外機の裏などを、丹念に偵察して回ります。この時期に、家の周りで一匹だけ、少し大きめの蜂が、同じ場所を何度もホバリングするように飛んでいるのを見かけたら、それは巣の場所を物色している女王蜂である可能性が非常に高いです。やがて、最適な場所を見つけると、女王蜂は、木の皮などをかじって作った材料で、たった一匹で巣作りを始めます。スズメバチであれば、とっくりを逆さにしたような、小さな初期巣を。アシナガバチであれば、数個の六角形の巣穴を持つ、小さな巣盤を作ります。そして、その中に最初の卵を産み付け、働き蜂が羽化するまでの約一ヶ月間、子育てに専念します。この、女王蜂が一匹だけで活動している春先こそが、蜂の巣対策における「ゴールデンタイム」です。もし、この時期に作り始めの小さな巣を発見できれば、比較的安全に、そして簡単に駆-除することが可能です。春の穏やかな陽気の中、静かに、しかし着実に、蜂たちの新しい一年が始まっているのです。