家の中でチャバネゴキブリの卵鞘を発見することは、それ自体が非常に恐ろしい事態です。しかし、それと同等、あるいはそれ以上に深刻な意味を持つのが、「ゴキブリの幼虫」を発見することです。米粒ほどの大きさの、黒くて艶のある小さなゴキブリ。一見すると、成虫ほどの恐怖感はないかもしれませんが、その一匹の存在は、あなたの家がすでに彼らにとっての繁殖拠点、つまり「ホーム」になっていることを示す、動かぬ証拠なのです。まず理解すべきは、チャバネゴキブリの幼虫は、成虫とほぼ同じ場所に潜んでいるということです。彼らもまた、暖かく、暗く、湿った狭い隙間を好み、夜間に活動して餌を探します。そして、脱皮を六回から七回繰り返しながら、約二ヶ月という短期間で成虫へと成長します。つまり、幼虫がいるということは、そのすぐ近くで卵鞘が孵化したという事実を意味します。そして、孵化した卵鞘が一つだけである可能性は極めて低く、見えない場所には、これから孵化を待つ他の卵鞘や、すでに活動している他の幼虫たちが無数に存在していると考えるのが自然です。さらに、幼虫の発見が事態をより深刻にする理由が、その「サイズ」にあります。成虫でも十分に小さいチャバネゴキブリですが、孵化したばかりの幼虫は体長わずか三ミリ程度です。この小さな体は、成虫では入り込めないような、さらに微細な壁のひび割れや、家具の継ぎ目、家電製品の内部の基盤の隙間などにまで、容易に侵入することを可能にします。これにより、彼らの生息範囲は家中に拡大し、駆除はさらに困難を極めることになります。また、幼虫も成虫と同様に、道しるべフェロモンを出しながら移動するため、彼らの活動が、さらなる仲間を呼び寄せる原因ともなり得ます。卵鞘の発見が「これから起こる悲劇の予告」であるとすれば、幼虫の発見は「すでに悲劇が始まっていることの証明」です。もし、あなたが家の中で小さなゴキブリの姿を見かけたら、それは成虫以上の警戒と、迅速かつ徹底的な対策が必要であることを示す、最終警告だと受け止めるべきなのです。
ゴキブリの卵と幼虫を見つけた意味