あれは私がソロキャンプを始めて二回目、初夏の美しい渓流沿いのキャンプサイトを訪れた時のことでした。設営を終えて心地よい川の音を聞きながら、ハーフパンツ姿でリラックスしてコーヒーを飲んでいた私は、足首のあたりに小さな黒いハエのような虫が数匹まとわりついているのに気づきました。「山の虫は元気だな」程度にしか思わず、手で軽く追い払ってそのまま過ごしていましたが、それが大きな間違いでした。キャンプ場を後にして帰宅の途につく頃、足首に違和感を覚え始めました。何箇所か小さな点のような出血があり、そこが少しずつ熱を持って硬く腫れ始めていたのです。翌朝、目が覚めたときの衝撃は今でも忘れられません。私の両足首はまるで丸太のようにパンパンに腫れ上がり、くるぶしの形が消えていました。そして何より、経験したことのないような猛烈な痒みが私を襲いました。蚊に刺された時のような表面的な痒みではなく、皮膚の奥底から何かが暴れているような、じっとしていられないほどの激しさです。冷やしても薬を塗っても一向に収まらず、夜も一睡もできないほどの地獄を味わいました。後で調べて知ったのですが、その犯人こそが「ブヨ」でした。ブヨとは、こんなに恐ろしい生き物だったのかと、自分の無知を呪いました。皮膚を噛み切られて毒を注入された結果、私の足は一週間以上も紫色に腫れ、歩くたびに痛痒い感覚が続きました。あまりに痒くて掻き壊してしまった場所は膿んでしまい、結局皮膚科へ駆け込むことになりました。医師からは、ブヨの毒素は強力で、体質によってはアナフィラキシーに近い反応が出ることもあると聞かされ、背筋が凍る思いでした。完治するまで一ヶ月以上かかり、今でも私の足首には茶色い虫刺されの跡がいくつも残っています。この苦い体験から得た教訓は、自然を舐めてはいけないということです。特に水辺の近くでは、気温が上がる朝夕は絶対に肌を露出してはいけません。どんなに暑くても長ズボンを履き、靴下で裾をガードすることの重要性を身をもって学びました。ブヨとは、一見すると弱々しい小さな虫に過ぎませんが、その一噛みは人間の日常を一瞬で破壊する力を持っています。これからキャンプを始める皆さんには、私のような失敗をしてほしくありません。美しい川のそばには、必ず彼らが潜んでいるということを忘れないでください。